肝臓・胆嚢・膵臓の病気
A型肝炎ウイルス（HAV）に感染することによって起こります。経口感染（貝類や汚染された水や食べ物）でおこることが多いです。発熱や倦怠感など風邪症状のような初期症状から進行すると、嘔気・嘔吐や黄疸なども出現する場合がありますが慢性化することはありません。
B型肝炎ウイルス（HBV）に感染することによって起こります。血液感染（輸血や出産、刺青・タトゥー針刺しなど）や性交渉などによることもあります。成人での感染では急性肝炎を一過性に発症し持続感染することは多くはないです。
C型肝炎ウイルス（HCV）に感染することによって起こります。血液感染（輸血や出産、刺青・タトゥー針刺しなど）や性交渉などによることもあります。急性感染では、通常、無症状が多いですが、半数以上が慢性肝炎へ進行します。
E型肝炎ウイルス（HEV）に感染することによって起こります。経口感染（豚、猪、鹿などの食肉の加熱不十分）でおこります。A型肝炎と同様の症状を呈しますが重症化率はやや高いと言われています。
おもに先天的に生じる肝臓内に液体の貯留した袋状のものを言います。大部分は無症状で検診の超音波検査などで発見されますが、大きなもので胃の圧迫症状などを呈し生活の質が障害されると治療対象となる場合があります。また出血を伴うものは悪性腫瘍との鑑別のため精査が必要となることも多いです。
細菌や真菌、原虫などが肝臓内に侵入し膿が溜まった病気です。高齢者や糖尿病、悪性腫瘍など免疫力の低下した方が発症のリスクとなります。そのため合併疾患の検査も必要となります。
おもにアルコールの過剰摂取で生じる肝障害であり、一定量以上を経年継続することで発症します。アルコールの過剰摂取は脂肪肝から肝線維症、肝硬変、肝癌に至る慢性の肝障害や、炎症・肝細胞壊死にアルコール性肝炎があります。禁酒が唯一の治療ですが、肝障害に伴う種々の症状に対する対応も必要です。
脂質が過剰に肝臓の細胞に溜まった状態です。我が国の検診では受診者の約30%は脂肪肝を伴っているとも言われます。アルコールが原因のものと、そうでない非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)があります。
非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の方は、多くは肥満や糖尿病、高脂血症、高血圧などを合併していることが多いです。このような方で肝炎が持続し、徐々に線維化が進行する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)という病態になります。NASHが進行していくと肝硬変や肝癌に進行していくとされています。
処方薬やドラッグストアで購入できる薬、サプリメントや漢方などが原因で起こる肝機能障害です。血液検査の結果で判明することが多く、症状としては倦怠感、食欲低下、吐き気、嘔吐、黄疸、褐色尿などを認めることがあります。疑った場合はただちに原因となる薬物を速やかに中止する必要が多いです。
免疫異常で起こると言われており、中年の女性に発生することが多い病気です。肝臓での胆汁の流れがうっ滞し、それに伴い肝細胞の破壊と線維化が進行します。かゆみなどの症状で発見されることもありますが、検診などの血液検査異常のみで無症状の場合もあります。
胆嚢内に形成された結石のことで、結石には胆砂や胆泥含みます。検診など無症状で発見される場合も多いですが、胆石発作による腹痛で発見されることもあります。無症状では経過観察になることが多いですが、悪性性腫瘍の合併が否定できない場合は手術を検討する必要があります。
胆汁の通る胆管(総胆管)にある結石を言います。胆嚢結石や落下したものや、総胆管内で形成されるものもあります。結石の嵌頓による急激な腹痛と黄疸と、感染の合併による発熱を認める場合は速やかな検査と治療が必要になります。
大部分が胆嚢結石が原因で起こるもので胆嚢内の胆石が胆汁の出口を塞いでしまい胆嚢内の胆汁のうっ滞と感染が合併し起こります。
胆管内の閉塞と胆汁のうっ滞と感染が合併しておきます。総胆管結石や悪性腫瘍による閉塞などが原因となります。こちらは胆嚢炎より重症化しやすいため注意が必要です。
胆嚢粘膜に認める隆起した病変です。無症状で検診で発見されることが多く、コレステロールポリープ、過形成性ポリープ、炎症性ポリープ、腺腫や腺癌などがあります。胆嚢ポリープの大部分は5ミリ以下での多くは良性のコレステロールポリープと言われています。
胆嚢の壁が部分的あるいは全体に厚くなる（胆嚢壁肥厚）状態をいいます。
多くは検診など無症状で発見されることが多いですが、胆石や胆嚢炎の併発やまれに癌との鑑別が困難な場合は手術が必要となることもあります。
胆嚢に発生する悪性腫瘍で、胆石を合併する方が50％以上認めます。女性の方がやや罹患率が高く、肥満、糖尿病、喫煙、飲酒、重金属などが発生のリスクになると言われています。合併する胆石による症状で発見されることがあります。
胆汁が通る胆管と膵液が通る膵管が合流する場所が正常より手前に形成される先天異常です。胆管と膵管の合流場所には筋肉があり膵液が胆管に逆流しないように調節されています。合流異常では筋肉のないところで合流するため、膵液が胆管や胆嚢に逆流し、胆管炎、胆石、胆道癌のリスクになります。また胆汁が膵管に逆流し、膵炎を起こすこともあります。
急性膵炎は膵液に含まれる消化酵素により、自ら膵臓を消化してしまう病態です。原因はアルコールや胆石が多いですが原因不明のものもあります。
慢性膵炎は膵臓の正常な細胞が壊れて線維に変わる病気です。原因はアルコールが多いですが、原因不明のものも多くみられます。慢性膵炎では、膵液が通る膵管が細くなったり、膵管の中に膵石ができたりし膵液の流れが悪くなると痛みが生じる場合があります。
診断と治療が非常に難しい癌です。原因ははっきりしませんが、慢性膵炎、糖尿病、膵臓癌の家族歴、喫煙、肥満などが膵臓癌のリスクとなると言われています。進行すると、腹痛、背部痛、黄疸、食欲不振、体重減少が出現し、糖尿病が急に悪化した場合も膵臓癌の可能性があるため注意が必要です。
膵臓に発生する袋状の病変で、検診など無症状で発見される方も多いです。良性のものから悪性のものまであり、そのため正確な診断が必要となります。単純嚢胞から、膵管内乳頭状粘液産生腫瘍（IPMN）、粘液性嚢胞腫瘍（MCN）、漿液性嚢胞腫瘍（SCN）、充実性偽乳頭状腫瘍（SPN）などがあります。
膵液の通る膵管の先天異常です。胎性期に腹側膵管と背側膵管の2本が癒合して膵管となりますが、この癒合がされない方が膵管癒合不全となります。多くの方無症状ですが、ときに膵液の流れが滞り膵炎を起こしやすくなる場合があります。
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